2025 夏号 Vol.132
営農レポート
赤色ネットと太陽熱土壌消毒を活用したコマツナの害虫・雑草防除
化学合成農薬は病害虫防除に効果的な資材ですが、同じ系統の農薬を連用すると薬剤抵抗性が発達しやすい等の問題があります。そこで近年、化学合成農薬だけに頼らない病害虫や雑草防除の技術が注目されています。この度、コマツナを対象として①アザミウマ類の侵入防止に効果が高い「赤色ネット」を張った施設で、②夏の太陽熱で害虫や雑草を死滅させる「太陽熱土壌消毒」を行って効果を確認したのでご報告します。

(シルバーリング)
実施の概要
赤ネット・太陽区 | 慣行区 | |
防虫ネット 太陽熱消毒※ |
赤色・0.8mm目合い 7月29日~8月27日 |
白色・0.8mm目合い - |
播種日 | 8月27日 | 9月3日 |
収穫期間 | 9月22日~24日 | 9月28日~10月1日 |
収穫調査日 | 9月24日 | 10月1日 |
※太陽熱土壌消毒の手順
(1)前作の残渣の撤去後に、次作の堆肥や肥料を投入して耕耘します。
(2)約1時間灌水して土壌を湿らせた後、透明ビニールで地表面を全面被覆します(写真2 この調査では農ポリ、厚さ0.05mmを使用)。
(3)ハウスの側窓や出入り口等、開口部をすべて締め切って放置します。
(4)約30日後にハウスを開けてビニールをはがし、土壌を数時間以上冷まします。
(5)耕耘せずにそのまま次作の播種をします。

結 果
赤ネット・太陽区の地中(深さ15cm)の温度を測定したところ、消毒期間中40℃以上を保ち、最高60℃近くとなりました。土中に潜む害虫の多くは地温40℃以上で死滅するとされているので、太陽熱による地温の上昇は充分であったと考えられました。また、コマツナの栽培期間中に捕獲したアザミウマ類等の数、及びこれらによる被害痕は、赤ネット・太陽区の方が少なかったです。以上から、太陽熱消毒による殺虫効果と、赤色ネットによるアザミウマ類の侵入防止効果が発揮されたものと考えられました。
雑草について見ると、慣行区ではコマツナ栽培期間中にゴウシュウアリタソウ等が発生しましたが、赤ネット・太陽区ではほとんど見られず、太陽熱土壌消毒には高い殺草効果が確認されました(写真3)。

(左:赤ネット・太陽区・右:慣行区)
注意事項
- 赤色ネットの効果は、アザミウマ類以外の害虫には白色ネットと同程度なので、その他の害虫対策は別途実施する必要があります。
- 太陽熱土壌消毒は、地温が上がりやすい7月中旬から8月中旬頃が適期です。
- 土壌消毒実施後に害虫がハウスに侵入しないよう、開口部の開閉には注意してください。
- 太陽熱消毒を行うと土壌中の有機態窒素が無機化し、地力窒素が増加しますので、元肥の施用量は通常より2割程度減らすようにしてください。
- 太陽熱消毒の効果が見られるのは深さ20㎝程度までと浅いため、消毒後には耕耘しないように注意してください。
- 消毒後、高温のままで播種すると地温が高く、発芽不良を起こす可能性があります。地温が十分下がったことを確認して播種してください。
これらの技術についてご興味、ご質問がある方は、JAまたは普及センターまでお問合せください。